第1章 アネモネの夢00~50
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「百合さん、今日は俺が送っていきますね」
「昴君、ありがとう」
今日は兄上と市は早くに出ちゃったんですよね。だから俺が護衛ですとにっこり笑うと苦笑いが返ってきた。まあ、あの女を遠くに配属させたの俺と言っても過言じゃないですからね
2人でお市様の作ってくれた弁当を持って、己の車を出してくれば百合さんが目を見開いてこっちを見て
「昴君運転できるんだね」
「百合さん?そんなに運転出来ない様に見える?」
「うん!」
「ひでえ!」
やっぱ俺はいつまでも童顔なのかと項垂れれば、ごめーんと肩を叩かれた。ちょっと痛い。
ほら遅れちゃいますよと助手席のドアを開けて促せば紳士ですねと笑われる。
ふーんだふーんだ、普段どんな風に見てたんですか。俺だって男ですよ。
「会社に着いたら松本社長とお話があります」
「あ、じゃあ着いたら案内しますね」
暫く1人にならないで下さいね、とか。雹牙さんが言ってた注意を復唱すれば。ご迷惑を掛けますと頭を下げられたけど。俺達は市で慣れてるから気にしないでよ。
会社に着いて、松本社長の部屋に案内されたのでお礼を言ってからノックをする。どうぞと返ってきたのでドアを開ければ俺の顔をみて社長が驚いてたけど
ええっと、今日は百合さんの今の現状報告です!
「そうか、暫く1人は危険な状況か」
「飛ばした女だと思うんだけど結構過激になってるみたいで、逆恨みもいいとこですよね」
「俺の選択が間違っていたのかな?」
「松本社長は英断だと思います。ただ相手がおかしい人だったんですよ」
だから、なるだけ1人にさせないで欲しいんです。
百合さんに何かあったら俺達の責任でもあり、失態です。俺達は失敗をけして許さない、許せない。
「黒羽さんと雹牙さんはお昼過ぎに来る予定ですので」
「ああ、昴殿もありがとう。会社に居る時、俺と出かける時は細心の注意を払おう」
「お願いします」
では、と人好きする笑顔で出てった青年を見送ってから秘書課に向かえば、藍羽が今日の資料や書類をてきぱきと纏めているところで。
此方に気付いた藍羽に今日は出掛けるから付きを頼むと声を掛けて社長室に戻って行った。