第1章 アネモネの夢00~50
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仕事中に黒羽と雹牙にナンパ仕掛けてるの?うちのお兄さん達そういう不真面目大っ嫌いなんだけど。
朝ご飯中に雹牙から珍しい愚痴を聞けば、そんな子が百合ちゃんの会社に居るんですか。あれかな?例の黒幕女。百合ちゃんにストーカー仕掛けさせて追いかけ回して潰そうとしてる子だっけ。
黒羽と雹牙に聞けばうんうんと頷かれ、百合ちゃん苦笑いだけれども。
「何と言うか、すみません。うちの会社の者が」
「藍羽のせいじゃないだろうアレは」
「下心駄々洩れで近づいてきますよねアレ」
アレだのコレだの名前は口にしたくないらしい。私が百合ちゃんの会社に行った時はすーっごいブリっ子ですよあの子。私が織田だと知る前はちょいウザがられたんだけど黒羽と雹牙の妹だと知った後の態度が雲泥の差。
「百合さん、今日はそちらに俺と明智さんが行きます」
「昴君が?」
「はい、社長さんから手を貸して欲しいって、会社では普通にしてていいですよ」
明智さんって、百合ちゃんが雹牙に呟けば前に来た事あるだろうと。え、あるの?
黒羽と雹牙は今日は織田でお仕事だそうで、だから2人が代理で行くそうな。
社長さんに助力を請われたのなら私は口を出せません。気を付けて行ってねと見送って、私も雹牙の運転で会社に出勤していった。
「本日は兄の黒羽、雹牙の代理で来ました織田昴です」
「明智光秀と申します、今日我々が呼ばれた理由は…」
「今日は俺の我儘ですまない、世話になってる黒羽殿と雹牙殿にこれ以上迷惑を掛けたくなくてな」
営業課の問題児が会社のロビーで2人をしつこく誘惑してると話を聞いた時は頭が痛かった。
幸い2人は気が良く、気にするなと苦笑いされたが、こちらとしては何度も迷惑を掛けたくないし親会社の社員に何かあっては困る。
同期の竹中にそう伝えればこの2人を紹介されたのだが。
「ちょうど兄達が今朝話してたので、お力になれる事があれば!」
「んふふふ、命知らずなお嬢さんですね」
先日減給を言い渡したのだが自分が悪いと思って無いのか懲りてないらしい。顔の知られてない2人が居れば何とかなると竹中に言われる。
この2人も見目が良く、いい意味で目立つので営業課には早くも噂が流れていたらしいとそこの主任から報告は上がっていた。