第1章 アネモネの夢00~50
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――ドウシテコウナッタ?
現在、目の前にはあの日見た麗しい姿の男性が座っていて、一緒にイタリアンを食べている!
いやまだ頼んでないから、食べようとしているというのが正しいのだけれどメニューを見ていても全然頭に入って行かない。
さっきこのお店に入る前にも腕を差し出されて何かと思ったら、エスコートしてくださるとか完全にプライベートモードの私じゃ頬に熱が昇るのは抑えきれませんでした。
恥ずかしくて俯いてしまったけど、目の前の男性、雹牙さんは気にせずに話しかけてエスコートしてくれました。やっぱり出来る男性は諸々が違います。私、男見る目なかったっていうか、あれはもう気付いたらお付き合いとかいうことになってたからノーカンにしましょう、そうしましょう。
思わず元彼を思い出して遠い目をしてたらどうしたと声を掛けられて我に返り、目の前に視線を戻すと訝しげな表情で見られて慌てて首を振るとメニューに向き直る。
偶然が重なって起こった奇跡的なサプライズできっと二度目はないと思うし、どうせなら楽しく美味しく過ごしたいわけで何を食べようかと改めてメニューを見る。
「何か食いたい物あるか?」
「う……食べてみたい物ばっかりですけど、なにぶん胃がそんなに大きくないので」
「ふーん? なら、適当に頼んでシェアするか?」
「良いんですか?」
「ああ、構わない」
「やった! じゃあ、コレとコレ、食べてみたいです」
全体的にボリュームがありそうなお店だったので、一人で食べきれそうな物を探していたらシェアを提案してくれたので喜んで遠慮なく食べたい物を答えた。
こういう場合、本来の可愛い女性というものは遠慮したりするんだろうけど、私はしない。だってどれでも良いとか一番困るもんね。
相手がどう思うかはわからないけど、あの醜態をさらした後じゃもう色々と女捨ててるような気がするし、取り繕うのも面倒くさいし、二度目はないなら我慢より欲求に素直な方が良い。