第1章 アネモネの夢00~50
「そう言えば先日、俺達は自己紹介してなかったな」
「あ、藍羽百合です」
「織田雹牙だ。先日お前を介抱した市の兄に当たる」
「あの時は本当にご迷惑を」
「迷惑だと思ってたらあのような行動はしない、気に病むな」
黒羽の紹介は別にいいか、再び会う事があれば勝手に自己紹介でもするだろう
藍羽がどことなくぼうっとしてるのでデコピンをしてやれば痛みにのけ反った。いや、マヌケな顔だったからお市様にする感覚だったというか…
思わず吹き出し笑みを零す。そう言えばお市様があんまり連絡来ないと凹んでいた。秘書ならば忙しいのも道理、帰ったら伝えておくか
「ええっと、織田さん?」
「雹牙でいい、周囲に織田が居すぎて混乱する」
「では雹牙さんで」
角を曲がり駐車場に止めて駐車手続きを済ませてる時に変な視線を感じて周囲を見るが特に不審者は見当たらない
首を傾げて、気のせいかとも思ったが…まあ、何かあったら潰せばいいか。物理的に。
今世で平和な世に生まれたものの、忍の能力も記憶も健在。今でもお市様の良いボディガードになってるからいいが。
「どうかしたんですか?」
「いや、気のせいだ。藍羽」
「はい?」
ん、と腕を差し出せば首を傾げられた。エスコートの積もりだと言えば顔を赤くしてそっと手を添えられる。
慣れない事はするもんじゃ無いなと自分の行動に溜め息を吐きかけるが、まあ、腹減ったしいいか。