第1章 アネモネの夢00~50
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「ただいま帰りました」
「百合ちゃんおかえりなさい、ご飯にする?お風呂にする?」
「市ちゃんが良い!」
「きゃー!」
「何やってるんだお前等」
藍羽が仕事から帰ってきたのをお市様が迎えると、女2人できゃいきゃい言いながら訳分らん行動を取り始めたので思わず口が出る
新婚夫婦ごっこ?俺は詳しく無いが面白いのか?それ。
もう夕食の準備が出来る頃なのでさっさと手を洗って来いと藍羽に言えば「お父さんだ」と言われ、にっこりと笑顔で微笑めば慌てて逃げる様に洗面台へと走って行った。
お市様といい藍羽といい俺は子を持った事が無いんだがな!?
もう少しで信長公と濃姫様も帰宅して来るハズだなと時計を確認し、己もスーツ姿のままだと思い出し、私服に着替えに自室に戻る
着替えて戻れば藍羽もお市様の手伝いをしていて、俺を見るなり拝んできたのでアイアンクローでシメればギブギブと。
「雹牙、何やってるんですか」
「いや、何か手が勝手に動いた」
「雹牙さん最近、百合さんに対する反応がお市様ですよね」
昴がケラケラ笑いながら昔の口調で言う。そう言われればそうだと自分の最近の反応を思い出してはあ、と。息を吐く。
藍羽の行動が妙にお市様とシンクロしてダブって見える辺り重症だな。
妹が増えましたねと黒羽が笑うが。個人的にお市様は1人で十分だ。増えてどうする。
「え、昴さんって私と同じ年なんですか?」
「あれ、知らなかった?って、そんなに面識無かったもんね」
「いや、若く見えますね」
「ああ…この地毛のせいかも」
餓鬼によく見られるんだよねと笑う昴と藍羽の会話を聞きながら、いただきますと夕食を開始。たくさん食べてねと笑いかける市に藍羽は嬉しそうに美味しいと笑った。
今日はピーマンのお浸し、茄子のソテーにささみの梅チーズフライ、あとはジャガイモと玉ねぎの味噌汁。
「美味いな」
「美味しいですよ」
「ありがとう」
俺達が感想を言うのが珍しいのか、藍羽にきょとんとした目で見られたが。俺達はお市様が作ったものに感想を言うのは日常だったからな。