第1章 アネモネの夢00~50
「貴女が藍羽百合殿でしょうか」
「はい?」
名前を呼ばれ、振り返ると見た事もない長髪で、銀髪の男性がにっこりと自分をみて微笑む。また物凄い美人が居るなと眺めていれば背後から百合の頭を掴んで引き寄せる存在に驚いたが
社長に用で仕事に来ていた雹牙は男にどうしたと聞いて、知り合いかな
「ああ、こいつはうちの明智光秀だ。わざわざここまで来たのは…」
「お市様の事で黒羽殿と雹牙殿の耳に入れておきたい事がありまして」
「?」
「はい、今朝お市様宛に届いた文です。貴方がたは見覚えのあるでしょうが…白い封筒に写真と一緒に入っておりました」
雹牙は無言で便箋を受け取ると、黙って読んでいる顔の眉間にどんどん皺が寄る。
「あえて聞きますが、雹牙さん、何て?」
「内容はただの猥褻物だ。気にしない方が良い。明智、これを豊臣の竹中殿へ持って行って貰えるか?」
「ええ、豊臣に用があるのでついでに持って行きます、雹牙殿はここを頼みますよ」
「解っている」
ぺこりと、優雅な動作で頭を下げる光秀に。百合はただただ「織田には美人が揃ってるなぁ」と感想を零す。あいつは変態だぞ、と言われて雹牙の顔を二度見して、何事も無かったかのように笑われた。
「変態さんなんだー」
「市が言うにはドSとドMだそうだ」
「どっちですか」
「両方だ」
「何の話をしてるんです?2人とも」
「明智の話だ」
「納得しました」
「しちゃうんですか」
まるでコントの様な会話を繰り広げる3人に、通り過ぎた社員が噴出して百合の同僚が笑いだしたり。平和だなとお茶を啜る社長が居たとか。
「ところで、文には何て?」
「あー…市を想うあまりに暴走していて全体的にシモネタというか、猥褻物と言って過言じゃない」
「市ちゃんに粗末なモノを見せる輩が居たら踏みつぶしますね」
いや、お前も庇護対象なんだが…何となく口に出せなくて顔が引き攣ってしまったそうな