第1章 アネモネの夢00~50
「おい」
「ふぇ?」
「お前な、一人でさっさと行こうとするな」
目的のテナントに向かってたら突然頭をガッシと掴まれて、反射的に足を止めると雹牙さんの声が聞こえてきて首を傾げる。
一人でも大丈夫な量だから、二人も行く必要ないと思ったんだけどなと振り返って視線を合わせれば不機嫌そうな無表情があった。
ちょっと怒ってる雰囲気もあって、首を竦めたら深いため息を頂戴してしまった。
美形は何しても美形だ、眼福。
しかし、叱られるのは不本意なので無意識に唇を尖らせて拗ねた顔になってしまった私は、わしわしと頭を撫でられて再び首を竦める。
「せっかく男が居るんだから金出させれば良いだろうが」
「いやいやいや、それなんか違いますから!」
「……お前、変わってるって言われないか?」
「言われますけど、それとこれは違いますよね?」
ぷうっと頬が膨らむのを止めれずそっぽを向いて文句を言えば、クツクツと喉の奥で笑ってるような音がする。
笑われてるらしい。でも、いい男は女に金を出させないとか言うけど、私的にはあんまり嬉しくない。
だって、金づるとして付き合ってるみたいなんだもん。
特に雹牙さんは夕飯の度にいつの間にか奢られて居るのだ、今日くらいはと思ったのに捕まってしまった。
挙句、市ちゃんの手前いいかっこさせろと言われたら断ることも出来ない。
仕方なく、小さく息を吐いて頷くと目的のテナントへ向かい、片っ端から買うと決めたスイーツを注文、購入しながら市ちゃんたちの席へと戻ることになった。