第1章 アネモネの夢00~50
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市ちゃんに尼子君共々腕を引かれてたどり着いたのは、スイパラである。
食べ放題ではなく、いくつものスイーツショップがひしめき競合しながらもクーポンやイベントでは協力し合っているテナントビルである。
出入り口は一箇所で、イメージするなら建物の中の屋台という感じだろうか?
入り口でクーポン付きのパンフレットを貰い、中に入ってそれを広げると市ちゃんと二人で覗き込む。
「尼子君は……」
「晴久でいいぜ?」
「あー……うん。で、晴久君は甘いものは?」
「食べれるけど別に好物じゃないなぁ」
「なるほど。雹牙さんも似た感じですよね? 最近たまに夕飯ご一緒させて貰ってますけど、デザートつけたりしないですし」
セットになってれば食べるけど、なければわざわざ付けなかったと思う。
そう思って確認すればそうだなと肯かれた。なら良いかと、市ちゃんと二人で食べたいものを選んでいく。
甘いものは別腹なれど、私は基本的に常人の腹なのだ。甘いものは無尽蔵に入るようなお腹はしていないので、むしろ、適度にバラけて買って全部の味見がしたい。
市ちゃんは私より食べれるみたいだけど、やっぱりたくさんの種類をいかに効率よく食べるかに話が移行していく。
ある程度目安をつけたところでパンフレットから顔を上げると、晴久君に手招きされて空いていたテーブルに案内された。
「晴久?」
「俺と雹牙で買ってくるから。どれが食べたいんだ?」
「え? 私買いに行きますよ? 晴久君が市ちゃんと座っててくださいね」
「は? いや、おい?!」
イケメン様は紳士っぷりも半端ないのはデフォなんだろうか?
思わずそう思ってしまいつつも、市ちゃんと同じ歳ということは年下なのである。
買いに走らせるなんてパシリっぽいことはさせるわけにはいかないし、何より財布出させるのはねぇ?
そう思って市ちゃんに行ってきますねと声を掛けてするりと席を立ち、財布片手にまずは遠方の一番食べたいのから入手すべく通路を歩く。