第2章 アネモネの夢51~99
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「乾杯」
『乾杯!』
市の挨拶から始まって、乾杯をすると。百合の両親は雹牙の横に座る丹波に近付き挨拶をし始めた。
雹牙の父と聞いているが苗字は別で。何か理由があるのだろうと察して何も聞かない。
「百地さん、娘が本当にお世話になりまして」
「百合さんのご両親ですか!いやあ、こちらこそ息子が…良く出来た娘が出来て嬉しい限りですよ」
「雹牙さんは丹波さんによく似ておられますな」
「あいつが老けた顔だとよく言われます、性格は真逆だと笑われますがね」
ちらりと、雹牙は丹波に視線を向けるも。直ぐに視線を戻して百合の世話を焼き始めた。余計な事は言わないだろうと分かってるのか会話を聞き流す。
席に座ってのんびりと飲んでた市は、友人との会話に花を咲かせる百合とその両親の元にすすすと移動すれば、「お義姉ちゃん」と零して百合に抱き付いた、
「市ちゃん?」
「ふふ、百合お義姉ちゃん?」
「ごっふ」
にこにこと、機嫌良さそうに百合にくっ付く市に百合は悶えながら市を抱き締め返して様子を見たら、普段あんまり酔わない市が機嫌よくなるくらい飲んでる?首を傾げれば同じく首を傾げられた。
「市ちゃんどれくらい飲んだの?」
「市?うーんと、このコップ3つくらい」
「コップじゃなくてジョッキだよね?」
くすくすと可愛くて綺麗な笑顔で笑ってる市は、百合の母にじっと見つめられてると気付いてぺこりと、綺麗な姿勢でお辞儀をすれば。何かがツボったらしい、市を抱きしめてぷるぷる震えていた。
「雹牙くん、妹さん凄く可愛いわね」
「母さん!?」
「百合お義姉ちゃんのおかあさん?」
「ええそうよ、百合のお母さんなの」
「百合お義姉ちゃん、お母さんやさしそうね」
「んもー、可愛いんだから!」
「母さん、市ちゃん潰れてるから離そうか」
少し酔っぱらって笑顔を振りまく市を晴久が回収し、代わりに信長が出て新婦の両親の相手をする事に。
迫力のある信長に一瞬後退ったが、話せば豪快な性格に百合の両親も好感が持てたらしい。