第2章 アネモネの夢51~99
「ごめんなさい、ちょっと浮かれ過ぎちゃって。どうぞ、お席用意してありますから」
気を取り直した母さんが笑顔で雹牙を案内して、漸くリビングでソファに向かい合って腰を落ち着けた。
「改めて、申し訳ない。妻と娘が失礼をしました」
「いえ……。今日は百合さんとの結婚のご報告に上がりました」
「許しを貰う、ではないんですね」
「百合さんはもう成人されている。互いの望みであれば許可は必要ないかと」
「ふっ……もちろんです。貴方ならきっと百合も幸せになる。娘をよろしくお願いします」
雹牙がかっこよく宣言してくれて、頬が熱くなるけど母さんの反応が気になる。だって、下向いて肩振るわせて感涙してる雰囲気だけど、絶対悶えてる、悶えてるよあれ! 首筋とか赤いもん!
また暴走し始めるんじゃないかと冷や冷やしながらも、雹牙がありがとうございますと頭を下げるのに合わせて一緒に頭を下げる。
顔を上げたら珍しく父さんが柔和な笑みを浮かべててレアだ! と叫びたくなった。しっぶいおっさん顔だから、ああいう柔らかい表情って滅多に見ない。っていうか、母さん独占中。それはいいや。
挨拶が終わって、母さんがまた半分暴走しながらもお昼ご飯食べてけって言うから一緒に食べて、意外に父さんと話しが合ってるみたいな雹牙見て嬉しくて私はにこにこだ。
「百合、百合」
「なあに?」
「良い子捕まえたわね」
「うん、すんごい出来過ぎたくらいに出来た彼氏様です」
「あら、旦那様になるんでしょ?」
「う……そう、だけど、まだだもん」
食器の片付けを手伝っている時に母さんに呼ばれて、こそこそ話してたら恥ずかしい事言われてつい言葉に詰まった。
クスクスと笑われて、紅くなる顔が隠せなくて食器を仕舞う振りでそこから離脱したけど遠目で見てたらしい雹牙に後で突っ込まれて更に紅くなってしまったのはどうしたって仕方ない話だった。