第2章 アネモネの夢51~99
「あいつはあれで自分に自信が無い。それを全部受け止めたのが姫様で、百合も同じく受け入れてくれた。俺はそれに礼を言いたいんだ」
にっと、眉をハの字にさせて困った様に笑う丹波に、百合は何となくお父さんなんだなとホッとして
「お義父さん、大丈夫です。雹牙さんには私も皆さんもいますから」
驚いた顔で、目を見開いた丹波ににっこり笑えば、俺は今の世であいつの父親じゃないのになと嬉しそうに笑った時。一瞬だけ氷の匂いがしたと思ったら目の前に立っていた丹波は消えていて。足元に苦無が刺さり驚いて辺りを見回す。
「丹波、何の用で伊賀から出てきた。よくもまあ、俺に上手く化けたものだ」
「雹牙!?」
「ったく、問答無用か。気が短いな雹牙」
「煩い」
ビリビリと空気が震える。これが殺気ってやつなのかと思いはっと気づいて、横に立っている丹波と歩いて来る雹牙の間に入れば。2人とも目を見開いて驚く。
「雹牙、落ち着いて。丹波さん話をしに来ただけだから」
「…話?」
ゆっくり、雹牙に近付いて頭を撫でる様に抱き付けば。丹波を睨み付けてた目が柔らかくなり百合を見る。
丹波さん心配してたんだよと宥めれば、害が無かったと認識したのかはぁっと息を吐かれて。後で詳しく聞くからなと言われて頷く。
「雹牙」
「何だ」
「良かったな」
変装を解いて、雹牙に嬉しそうに笑う丹波に、何の用で来たのかだいたい理解した雹牙は、目を逸らしながら「ああ」と、ぽつりと零した。
「お義父さん」
「ん?」
「不束者ですが」
「百合!?」
「あはは、良い嫁を貰って俺も嬉しいわ」
妙なこの父子の態度に家に苦笑いしつつ帰ってから市にこの事を伝えると
「ああ、アレ。素直じゃない雹牙と丹波さまの唯一のスキンシップ」
「それもどうなの…」
雹牙ってツンデレなのかな、と脳裏に過ったけどシメられる未来しか浮かばないので言わない。