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アネモネの夢

第2章 アネモネの夢51~99


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レストランに入って、慣れた動作でエスコートされて雹牙さんが引いてくれた椅子に座る。向かい側に彼が座った所でギャルソンがオーダーを取りに来た。
けど、最初から予約してあったのか料理に合わせたグラスワインを雹牙さんが頼んでくれただけで、早々に居なくなってしまった。
雹牙さんはそれほど口数が多いわけでもないから、私から色々話しかける。もちろん、こういう場で非常識にならない程度に、だ。
話したり外の夜景を楽しんでいる間に前菜から順番に食事が運ばれてくる。

「料理は百合の好きそうなものをコースに入れてもらったんだが」
「うん!凄く美味しい。景色も綺麗だし素敵」

見た目も綺麗で美味しそうな芸術品、自分でも満面の笑みになった自覚はあるけど隠す必要はないかなとそのまま口にして、ある程度食べた所で雹牙さんから声が掛かる。
ついつい食事に夢中になったけど、雹牙さんはまだ食べ始めてなかったみたいで内心慌てつつ首を傾げたら、食事について聞かれたから全力で頷いた。
この景色の見えるところで綺麗な盛り付けのお食事はとっても食欲刺激します。こくこくと頷けば雹牙さんも漸く食べ始めた。
しかし、味が好み過ぎてどうしよう、雹牙さんにバレバレだったのかなぁ……。基本的に好き嫌いはないから何でも食べるし、割とストライクゾーンは広めだから大体のモノは美味しいって感じる。
だから割と色んな人から何でも美味しそうに食べるって言われて、用意される食事も好みを聞かれることは少ないんだけど。
今日の料理は物凄く私好みです、ほんと出来た彼氏様です。拝んだら怒られるかな。そう思って見たからか、雹牙さんの顔がなんかしかめっ面に見えて思わず声を掛けたらふっと表情が緩んで微笑まれた。
ほっとして私も笑い返して食事を再開して、後はデザートかなと思ってる所で雹牙さんに名前を呼ばれた。

「なあに?」

良くわからなくて首を傾げたら手を差し出せと言われて、言われるままに手を差し出す。
雹牙さんの手が私の手をぎゅっと握って、こんな場所でどうしたんだろうと思っていたら左手の薬指に何かが嵌められた。
しっかりと納まった物が何か直ぐには判らなくて、雹牙さんの手が引いていくのを視界の端に捉えながらも左手をまじまじと見る。
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