第2章 アネモネの夢51~99
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「料理は百合の好きそうなものをコースに入れてもらったんだが」
「うん!凄く美味しい。景色も綺麗だし素敵」
美味しそうに頬張る百合を眺めてから自分も食べ始める。うちに越して来てから、夕飯はお市様が用意しているせいか、百合の味覚が俺達と似てきた気がするなと感じて注文したのだが正解だったようで。
新居を決め、百合はただの同棲だと思っているようだが。今日伝える言葉に…断られないだろうか。
「雹牙さん?」
「ん?」
眉間に皺を寄せてどうしたと聞かれ、ああ、不安が珍しく顔に出てたか、大丈夫だと薄く笑えばホッとした顔で俺を見る。
よくある定番の場所やシチュエーションかも知れないが。粗方食事も食べ終わった所で百合の名前を呼べばきょとりとした顔で見てきた。
ふっと微笑みながら己の手を出し、こう、と百合も動かすように指示すると首を傾げながら言う通りにする。
「左手をこう伸ばして、掌をこちらに」
「こう?」
ハイタッチするように手を出させ、それに俺の手を重ね。ぎゅっと百合の左手を右手で握ってスルリと薬指にある物を嵌めて手を引けば、百合の視線は自分の左手を見ていて、目を見開いた。
にこりと微笑んだまま再び百合の左手を握り、己の口元に持っていき唇を付ける
「結婚してくれないか?」
「ひょ、が、さん?」
「名前、呼び捨て」
「ひょーが?」
「ああ」
ぼろぼろと百合の目から涙が溢れて、ハンカチを取り出し拭ってやれば俺の手を掴んで固く握り、抱える様な姿勢で肩を震わせた。
不安にさせてないか?その涙に一瞬不安を覚えたが。何とか言葉に出して伝えようと必死に考えながら言葉を紡ぐ。
「済まない、いつも不安にさせて」
「ううんっ、ううんっ」
「…愛してる」
「うん…っ」
「これからも迷惑かけるかもしれない」
「そんなことっ」
バッと顔を上げた百合に微笑んで、掴まれれてる手で頬を撫でてやればころりと涙が1粒転がる。
驚かせ過ぎたかと思ったが、嬉しそうにはにかむ彼女が愛おしくて、気付けば俺も笑っていた。
泣き止んだか?問えば掴んでた俺の手に気付いて、謝りながらパッと手を離す。
お互いふっと微笑んで、食って帰るかとなった時に