第2章 アネモネの夢51~99
「凄いねぇ、カーテンはともかく、食器棚とか二か月以上かかっちゃうんだ」
「大きいの頼んだからな」
「うん、でも、そんなに大きいの必要かな?」
嬉しくてふわふわしてる。車は駐車場に入れて食器や雑貨を見ながら、ふわふわとした心地で歩いて呟く私の言葉にいちいち雹牙さんが拾って返してくれるのが嬉しい。
手を繋いで、腕を組んで、あれこれ覗いてウィンドウショッピングしながらもうすぐ始まる生活について話すのは、夢心地だ。
本当に本当なんだろうか? これ、気が付いたら夢で雹牙さんも居なくって自分の引き払ったハズのマンションで……。
「百合?」
「ぅ、あっ、ごめんなさい」
「いや。何考えてた?」
「ちょっと……その、夢じゃないよねって」
道の端にあった路地に連れ込まれて、視線を合わせられて聞かれたら誤魔化す方法も思いつかなくって申し訳なくなって言えば、小さくため息が落ちた。うぅ、すみません。
チラリと大通りの方を見て、周囲を見た雹牙さんが私を腕の中に囲ってぎゅって抱きしめてくれる。
トクトクと耳に当たる胸元から聞こえてくる心音があったかくて、自分と同じで少しだけ早めに聞こえてくるのは願望か、事実か。
でも、浮かれてる自分を否定しないで、不安になってるのにすぐ気付いてこうやってフォローしてくれて、ほんと出来た彼氏様だ。外見良し、性格良し、ちょっと口が悪いけどそれくらいの方が良いかなぁ。
私からもぎゅって抱き着いて少しの間目を閉じて擦り寄ってたら、その間優しく頭を撫でてくれてた。
顔を上げたら大丈夫か確認されて、その真剣な様子に思わず吹き出したらぺちんとおでこを叩かれたけど、また手を繋いで大通りに戻った。