第2章 アネモネの夢51~99
お市様が嫁に出るのならば、俺も腹を括らねばと。隠してあった小箱を見て微笑んで。
カレンダーを確認しながら、百合の部屋に行き今度休みの時に物件見に行くかと誘えば、嬉しそうな顔に心底ほっとする。
ああ、俺も随分と"普通"に溶け込めるようになったんだろう。それは黒羽達にも言える事なのだが。
「前世では人を何人も殺してる…そんな俺でもいいのか?」
「…今はしてないんでしょう?雹牙さんがいいんです」
ぽつりと零した言葉に、百合は何とも無しに応えてくれる。子供の様に甘える自分に嫌気がさして、悲し気に笑う俺の頭を抱えて撫でてくれ、気付いたら#なまえ#の胸に抱かれて眠っていた。
…百合の部屋で、しかも寝顔見られたのが少し恥ずかしくて頭を抱える。
「雹牙さんの寝顔ご馳走様でした」
「名前」
「え」
「呼び捨てで良い」
「あ~…」
少し、意地悪をして名前を呼び捨てにしろと言ったが、顔を赤くしてこくこくと頷いたのを見て
思わず、無意識だろうか。破顔して笑ってしまい、百合に驚いて顔をマジマジと見られたのにまた己の顔に熱が溜まった。
「お市様」
「ん、なあに?」
「お幸せに」
きちんと、祝福できただろうか。俺は