第2章 アネモネの夢51~99
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――愛してる
なんて、心臓が止まるかと思った。思わず硬直した私にも気づいてないのか、抱きしめる腕を緩めずに首筋に頬を寄せてくれてる。
そのまま肌にキスをされてぞわりと泡立って恥ずかしいやら何やら判らなくなってくる。でも、一番心を埋め尽くすのは歓喜。
自分はずっと二番目だから、そんな言葉を言って貰えるなんて正直無意識に諦めていて期待なんてしていなかった。そう思い知るのに十分な威力を持っていて、泣きたくないのに気付いたら涙が零れて止まらなくなってた。
「百合? すまない、嫌だったか?」
「ち、がっ……うれし、くてっ」
「……そうか」
私の身体が震えてることに気付いた雹牙さんが腕を緩めて顔を覗き込んで、泣いてるのを見て不安そうに眉を潜めたから慌ててぶんぶんと首を横に振って嗚咽に邪魔されながらも違うと伝える。
ホッとした様に息を吐いて頷いた雹牙さんが、涙が止まらない目尻とか、伝って零れていく涙を追いかけるように頬にも沢山キスしてくれるけどなかなか止まらない。
一生懸命深呼吸して落ち着けようとするけど無理で、雹牙さんが苦笑しながら泣きたいだけ泣けばいいって抱きしめてくれて涙腺が決壊した。どうしてくれよう、このイケメン。
ぎゅって抱き着いて、一番安心できる腕の中でわんわん泣いて、漸く収まった頃には目は腫れぼったいし声は枯れてるしでみっともない状態で恥ずかしくて顔が上げられない。
「百合、こっち向け」
「やっ! 無理ッ! 凄い顔してるもんっ!」
「良いから向け」
「ひゃっ?!」
身体を揺すられてイヤイヤするように雹牙さんの胸元に顔を埋めて抱き着いたのに、実力行使されて腫れぼったい顔を晒す羽目になりました。うぅ……でも、すっと宛てられた手が凄く冷たくて気持ち良くて、大人しくしていたら目の周りの熱っぽさがなくなる頃に手が離れて行った。
目を開けると雹牙さんがなんだか迷った風な顔をしてて、どうしたのかと首を傾げる。
「俺たちの、前世の話をした時もそうだが。お前は怖がらないな」
「何を?」
「この力を」
「何か怖がる必要があるの?」