第2章 アネモネの夢51~99
夜寝る前に、寝室にて百合に声を掛けてみるも自分でどう言ったらいいのか分からず、声を詰まらせながら。
今日晴久に言われた事を百合に問う。酷い我儘を言っている自覚はあるが。
問われた本人はきょとんとして俺の顔をみつめる。
「晴久君はこっちに来れないの?」
「あいつは長男だ。こちらに来る可能性は皆無だな」
「じゃあ、私達が晴久君の家の近くに住むとか」
「…いいのか?」
「うん、市ちゃんの傍に居たいんでしょう?」
「百合」
「うん?」
「…ありがとう」
「うん」
己の我儘を聞いてくれてありがとう。ぎゅうっと百合を強く抱きしめ何度も礼を言って
今までの生の中で、こんなに不安に思った事はないだろう、この温もりを大事にしたいと。目を瞑った。
ぼそりと。「愛してる」と囁いた言葉は百合に届いたのだろうか。