第2章 アネモネの夢51~99
にっこりと笑顔で躱されました、そうですか。反論は許さないってことですね、黒羽さんの笑顔が怖くて思わず雹牙さんに引っ付いたら苦笑されたのはご愛嬌です、ハイ。
嬉しいけど、考えたらちょっと怖いの。だってゴディバ、あの一粒うん百円のゴディバ。しかもイベント仕様。いくらかは怖いから調べない! お仕事中に大切に頂きますとも!
ケーキも美味しくてちょっとうるうるしながらも楽しく過ごして、お風呂とかも頂いてそろそろ良い時間だからと部屋に引き上げたら雹牙さんも一緒に来たので首を傾げてしまった。
「雹牙さん?」
「俺からもあるんだが?」
何が? と、本気で首を傾げたらデコピン頂いてもがく羽目に。なんで?! って思ったら、プレゼントだって言われて目を見開く。
「デートしてくれたの、プレゼントじゃないの?」
「それ含め、だ。お前はほんとに欲がないな」
「え、だって雹牙さんが傍にいてくれたらそれで満足だし」
「お前な」
僅かに頬を染めて顔を背けた雹牙さんが、一呼吸おいてまた私の方を見た。なんか緊張したような表情だったけど、とりあえず座る様に促されたから二人してベッドに座る。
大人しく待っていると、雹牙さんがリボンが掛かった細長い箱を差し出してきた。
「なあに?」
「開けてみろ」
促されて、リボンを取って丁寧に箱から取り出すと出てきたのはベルベットのケース。見覚えのあるブランドだなと思いつつ開けたら見たことがないデザインのペンダントが鎮座していて思わず雹牙さんを見る。
「俺からのプレゼントだ。誕生日、おめでとう」
呆然としてる私の頬に口づけて、ぺろりと目尻を舐められる。どうやら泣いてしまったらしい、けど、これどう見てもオーダー……。本当に貰っていいのか迷ってたら、箱から取り出して首に着けられた。
目立つデザインじゃないけど、とっても洗練されてシンプルなのに見劣りしない。どんな服にでも合いそうなスーツでも私服でも着てられる、そんなデザインだったそれを着けた私を満足げに見て微笑む雹牙さんに今度こそ涙腺は崩壊した。
雹牙さんを押し倒す勢いで腕の中に飛び込んで、涙でつっかえながらありがとうを繰り返してそのまま泣き疲れて引っ付いて寝てしまったのはかっこつかないから最後だけ忘れたい記憶だけど、素敵な誕生日になりました。