第2章 アネモネの夢51~99
嬉しくて自分がどんな顔してるかなんてわかんないけど、雹牙さんが優しい顔してるから多分嬉しそうなんだな。うん、母さんにメールを返して二人で駅に向かったら、案の定雹牙さん見てあんぐり口開けてる。あ、父さんも一緒だった。
「百合ちゃん! ちょっとっ!」
「何? ちょっ、ごめん! 雹牙さん待っててッ!」
呆然としてるとこから戻って来たかと思ったら、母さんに引っ張られて少し離れた所で真剣に聞かれた。挨拶もしてないのに失礼極まりないと私が怒ったら、それどころじゃないって逆に怒られた。意味わからない。
現実が信じられないのは判るけどさ、娘にあんな出来のいい彼氏とか詐欺かホストかって言うんでしょ。言っとくけど、ちゃんと織田グループの立派な御曹司だからね! 本人にその意識があるかは別として!
母さんを呆れ顔で見るのは私だけじゃなくて、基本的に父さんも私の味方みたい。だから言っただろうみたいな表情して、雹牙さんに謝ってくれた。出来た父で助かった! むしろ、この人だから母さんがこのままなんだろうなぁ。
ちょっと遠い目したくなったけど、雹牙さんの隣に戻ったら自然と手を繋いでくれて笑ってくれるから私も自然と笑顔になる。
はたと気づいたら、親の前でいちゃついてるって思ったんだけどうちは両親も似たようなものだから今更だった。
「ごめんなさいね、お写真拝見した時にどうしても信じられなくて」
「いえ」
「百合、良かったな」
「うん!」
母さんの言葉にどう反応したものかって困り顔の雹牙さんだけど、多分見た目結構無表情に見えるんじゃないかな。父さんも割と表情出ない人だから母さんは気にしてないけど。
父さんの言葉には私が思いっきり笑顔で頷いたから、雹牙さんに頭撫でられました。母さんたちは今からデートらしいです。私が嘘吐いてたら誕生日なのに奢らせようと思ってたんだって! 酷い!
でも、本当だったからこれ以上邪魔しないって二人で手を繋いで観光に出かけてった。
「雹牙さん、ありがとうね」
「気にするな。俺たちも行くぞ」
「うん!」
腕に抱き着いたらぽんぽんって頭撫でられて、今日は服が見たいからと私が良く行くお店がある駅に向かって歩き出し、夕方までたっぷり私に付き合って貰ってデートを楽しんだ。