第2章 アネモネの夢51~99
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自分の左手薬指に嵌った指輪を眺めて、思わずにやける。
あの新人さんも言った通り諦めた様であれ以来近づかれるどころか見られることもなくなったらしく、雹牙さんはホッとしてたみたい。
で、あの後約束通り指輪を買いに連れてってくれた雹牙さんは、ペアリングを買ってくれたので私は嬉しくて買ってくれた日からずっとお風呂以外では着けっぱなし。
仕事中はさすがに自重するけど、それでもふとした瞬間に目に入るとにやけっぱなしになる。
「そういえば、母さんに連絡してなかった。家の件は言ってあったけど、彼氏になってくれたとは言ってなかったや」
連絡しよーっと、携帯開いてメールを送る。ライン入れようよって言ってるんだけど今更覚えるの面倒って言うんだよね、その割にスカイプやってるのなんでだ。
電話でも良いんだけど、ちょっとだけ照れくさいからメール。たったかとメールを打ちこんで送信すると凄い速さで返事が返ってきた。
返ってくる返事に脱力感しかないけど、まぁ、さすが私の母ですよねー。何が気になるのか聞いたら容姿が最重要項目らしいので、雹牙さんの写真をって思ったけど撮ってなかったわ。
あれ? そもそもお引越しの時にご挨拶行ってくれて……あ、電話だったっけ?
良くわからなくなったから写メって送れば良いかな! って呑気に考えて部屋を出るとカメラ機能を立ち上げながら雹牙さんの部屋に向かう。
一応ノックをしてから声を掛けてドアを開けると目の前には禁断の構図が広がっていたので反射的にシャッターを切った。
「百合ちゃん?」
「何してるんだ、お前は……」
「いやぁ、今更ながらに母に彼氏様が出来ましたって報告してて、容姿が知りたいって言われたから雹牙さんを写メらせて貰おうと思ったら美味しい構図だったからつい」
てへって効果音付けるのを目指した表情と仕草をしたら、凄く呆れられた視線を雹牙さんから貰った。
だって仕方ないのです、本当に半分はそう思ったんだもん。半分は。もう半分はね、今は血が繋がってるけど容姿は以前の姿を踏襲してるって不思議な状態だからさ、妹さんに嫉妬しちゃうんだよ。