第2章 アネモネの夢51~99
「ごめんね、市ちゃんなんか雹牙さんに用事あって来てたんだよね。お邪魔しちゃった」
「え? ううん、市の用事もう終わったから」
「まだ母さんとメール続いてるから大丈夫! さっきの禁断の構図はばっちり送っとく!」
「えええぇぇっ! 百合ちゃん待って! それは待って!」
「待てませーん! じゃ、また後でー」
自分が情けなくてばいばーい、と冗談めかして笑いながら扉を閉めると自室に戻ってベッドにダイブです。あー、他のどっかの女性とかには絶対嫉妬なんてしないのになぁ。
むっすりした顔が戻らないので、ベッドに俯せたまま宣言通りにさっきの写メを母さんに送りつけてやったらなんか狂喜乱舞してプツリと返事が途絶えた。
私も携帯を放り投げて枕に顔を埋めたらいつの間にかうとうとしていたらしく、誰かが優しく頭を撫でてる感触で意識が浮上した。
ころりと横向きに転がると頭を撫でていた手が頬に移動して、またゆるゆると撫でられる。気持ち良くて上がりそうだった瞼がまた下がっていくけど、どうしても手の持ち主が見たくなって頑張って目を開けた。案の定、雹牙さんがベッドの端に座って私の事を見下ろしてる。
「ひょうがさん……」
「さっき、何で変な顔してた」
聞かれたけど情けなさ過ぎて答えられなくて、ふるりと首を横に振ると両手を伸ばして抱っこの催促。違えなく希望を汲み取った雹牙さんが膝に抱っこしてくれたので、首に腕を回して抱き着くと肩口に頭をぐりぐりと擦り付ける。
しつこくは聞いてこないから、なんとなく感覚では理由が伝わってる気がして更に情けなくて擦り付ける強さを強くしたら、雹牙さんの手が頬に当てられて顔を上げさせられた。
視線が絡むことしばし、お互い何も言わないけど雹牙さんがふっと苦笑した後、額にキスをくれて目を閉じると瞼、頬、鼻先、耳の横と順番にキスをくれる。
唇にもして欲しいのにそこだけは避けられて、もどかしくて自分から触れにいったら何度も啄んでからゆっくり舌を絡めるようなキスをしてくれる。