第1章 アネモネの夢00~50
「あら、藍羽さん。おはようございます」
「おはようございます! 掲示なんて珍しいですね。何かありました?」
「ええ、昨日遅くにこの付近で不審者が出て警察が呼ばれたんですって。丁度このマンションの近くで、多分藍羽さんが以前通勤路だって言ってた道ね」
「うわぁ……それは、ちょっとやだなぁ……。どうしよう……」
「あちらは電気も少ないし、人目にもなかなか付きづらいから暫くは遠くても大通りから帰っていらっしゃいな」
「うぅ、そうします。あちら側の方が近道なんですけどねぇ」
まだプライベートモードの私は顔にありありと面倒くさいとか、変質者とかは怖いとか、そういう感情が出ているんだろう。
苦笑した管理人さんにぽんぽんと肩を叩かれて宥められ、肩を竦めながらこっくりと頷くと小さなため息を一つ落としていってきますと声を掛けてマンションを出た。