第2章 アネモネの夢51~99
78
織田グループ本社にお遣いに行ってから早一週間、何もないかとあちらこちらから心配のライン貰ったり声掛けて頂いたり恐縮です。
が、今のところ何もないんですよねー。あるとしたら今日が週末だし、今日かなぁ……と、思いながら定時に仕事を終えて帰路に着くと玄関ロビーを出た所でバッタリ。
ああ、うん、待ち合わせもしてないし偶然でもなさそうだから、訪問時に聞いた会社名頼りに来たんだよね。
「貴女は織田さんとどういう関係なんですか」
「恋人ですが」
「嘘っ! 指輪も、してないのにっ!」
「はぁ……あのね、恋人が全員直ぐに指輪をするなんてただの思い込みだし、指輪じゃないかもしれないじゃない」
「そんなの屁理屈よッ!」
どっちが屁理屈なんだろう? とりあえず、こんなところじゃ落ち着けないし野次馬一杯になっちゃうな。どうしようか迷ったけど、腹割って話さないと多分この子は無理だろうなぁ。割と本気の目をしてるし。
「うーん、とりあえず、貴女のクビもかかっちゃうから移動しましょうか」
「は……?」
「あのね、ここ、私の勤め先。貴女がここで私を貶めるのは勝手だけど、貴女がどこの社員か聞かれたら私は答える義務があるの。つまり、プライベートな問題でも会社間の問題になるの。判ったら移動しようか」
息を飲んだ新人さんの背を押して歩き出し、ついでに心配そうに見てた同期に笑って手を振っておく。オーケーマーク作ってくれたから誤魔化すなり大事にしないように動いてくれるだろう。
新人さんを連れて入ったのは個室を貸してくれるカフェ。向かい合って腰を落ち着け、注文すると混んでないからか割と直ぐに出して貰えた。新人さんの顔がちょっと青いのはあれか、思ってもみてないこと指摘されたからかな。
「それで? 貴女は雹牙さんが好きだから私が邪魔。そんなところ?」
「……はい。本当に、織田さんと恋人なんですか?」
「嘘吐いても仕方ないでしょ? まぁ、帰る頃には証拠見せてあげるから食べたら?」
むすっとした表情の新人さんは、納得できない顔をしながらも大人しく頼んだ甘味を食べ始めた。私は携帯で珍しく自分から雹牙さんに迎えに来てと頼むと、何があったんだと心配されたので新人さんが仕事上がりに事実確認に来てると伝えると直ぐ行くと返ってきた。