第2章 アネモネの夢51~99
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最近、百合が居る松本の会社に行く用事が減り、珍しく本社で仕事をしていると、昼休みに入ってから別の部署の者に声をかけられて振り向く。
「織田さん、あの、良かったらお昼一緒にいかがですか?」
「弁当を持って来ているんだが」
「あ、じゃあ、一緒に」
「悪いが、貴殿とは初対面だ。一緒に食う義理が無い」
見かけぬ顔の女に声を掛けられ、キッパリ断るとあからさまに泣きそうな顔をして同情を誘おうとしている姿に呆れる
昔からこういう女に絡まれやすいので無視して去ろうとすればスーツの袖を掴まれて。ギロリと睨んだ。こいつ今年からの新人か。
上目遣いで見て来る女に溜め息を吐いて、振りほどこうとしようもガッチリ掴まれていて剥がれない。
部署の上司を呼びつけようと息を吐けば、離れた所から俺を呼ぶ声に気付いてそちらを見ると。向いた方向故か掴まれてた女の手が離れて助かった
「これ、君が落とした?」
「ん?ああ、助かった」
持っている紙を見て、抱えてる書類を確認すれば1枚足りない。差し出された紙の内容を確認すれば抜けた紙で
礼を述べて女性から紙を受け取る頃にはしつこかった女は上司に回収されたらしい、頭を下げて詫びていたので片手を上げて制した
「顔が良いと苦労するねえ」
「女性不信に成りかけた時期もあったがな」
「旦那も言ってたよ、大変そうだって」
「?あんたの旦那と面識があったのか」
「松本の社長は分かる?」
「あいつの奥方か」
松本殿の奥方は特殊な仕事に就いてる為滅多に出て来ないと聞いたが。
うちの会社に用か?と問えば、近くに来るついでに使いを頼まれ、訪れたとこで俺が困ってるのを見つけたらしい。
あの年齢の子は婚活に必死だからね、と妙にババ臭…達観してるので、あんたも若いだろうと言えば私はババアだよと豪快に笑われた。いったいいくつなんだこの女。
実年齢聞いて詐欺だと、俺よりも年上なのかと驚愕した。
『…で、これがその奥方の写真』
『え、若い。これが美魔女と言うやつ?』
驚いた顔の白猫のスタンプと共に送られた話題に昼休みのお弁当を食べてた百合は何気ない話題に思わず微笑む
社長の奥さん初めて見た。と送っていたら課に社長が顔を出して、午後にちょっと手伝って欲しいと声を掛けられた