第2章 アネモネの夢51～99

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今日も今日とて上機嫌で仕事を終わらせて、さて帰ろうと思ったら雹牙さんからラインが飛んできてた。見たらもう近くまでお迎えに来てるという内容で、一瞬きょとんとした後慌てて準備してロビーを出たら丁度会社の前に車が滑り込んできた。

「雹牙さん！」
「ああ、お疲れ」
「お疲れ様です」

会社の真ん前ですけど、色々あったことでとっくに彼氏認定されているので今更漸く引っ付きましたなんて言えるはずもなく……。
あ、社長には報告しました。なんか心配されてたので。それ以外は完全に羨望のまなざしですがスルーです、スルー。

「百合、顔紅いぞ？　体調悪いか？」
「う……違う。ちょっと視線が、恥ずかしくなって」
「視線？」

雹牙さんは自分への視線に悪意とかそういうモノがないと基本的にスルーするようで、どう見られているかっていうのは理解してるみたいだけど何も感じないみたい。
私が大丈夫だと言ったら、少し不思議そうな顔をしてたけど車を出してくれてホッとする。二人の空間で何もしゃべってないのにほんのり甘い気がする空気が気恥ずかしい。
雹牙さんは何でもない様子で夕飯に連れてってくれて、そのまま帰るのかと思ったら夜景が綺麗な高台に連れてきてくれた。

「雹牙さん？」
「もう、いいか？」
「え？」

後ろから抱きしめられて、背中を雹牙さんの胸元に預けると耳元とで緊張した声が尋ねてきた。一瞬何の事か判らなくて思考が停止したけど、抱きしめる手が私の手を取って指を絡めると甲を親指でするすると撫でてくる。
それはとても単調な動作なのに色を含んでいて、雹牙さんの言いたいことに思い当たると途端に頬が熱くなるけど、小さくコクリと頷いたら耳元にキスされた。
そのまま振り向かされて深く口づけされるともう一人で立っていられなくて、雹牙さんに寄りかかるみたいに支えられて夢心地でホテルに連れ込まれた。

「百合、可愛いな」
「やっ……ばかっ」

お風呂も一緒に入るとかハードル高くないかな！？　って思ったけど一人じゃ緊張とか色々で足が震えちゃうし、何より昨日……そう考えたら許しちゃった。
それで、今はベッドの上でじっと見られてる。恥ずかしい、すごく恥ずかしいけど触れ合う体温が気持ちよくてお互いに自然と抱き合う形になる。