第2章 アネモネの夢51~99
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昨日は状況が状況だけに皆には情けない姿を晒してしまったと半ば自己嫌悪に陥ったが。横ですうすうと寝息を立てて眠る百合の存在に安堵して頭を撫でる。
想いが届いたのだと、俺は今世では畏怖されなくていいのかと走馬灯の様に昔の状況を思い出して息を吐く。
少し意識が覚醒し始めたのか、隣で眠る百合が身じろぎ此方を向いたので、そっと抱き込めば己の胸にすり寄って来る。
ゆっくりと頭を撫でて寄り添うように転がる、手を頭から移動して頬を撫でると俺の名前を呼んで微笑む百合が愛おしい。
「雹牙」
「いたのか」
「時間ですよ」
「はー、時間が流れるのが早いな」
黒羽に起きる時間だと声を掛けられ、時計を見てから百合に声を掛けると、薄っすらと目は開いたがまだ脳みそが寝てるな?
顔を両手で支え、額から瞼、頬、唇に口付けると顔が赤くなって俺の胸に埋まる感じで抱き締められた。
「おはよう」
「お、はよ。もう、恥ずかしいです…」
「嫌か?」
「もうっ、そうじゃないんです。心臓ドキドキで死んじゃいそう」
クククと思わず笑いが込み上げて、力強く抱きしめてから。仕事に行くぞと起き上った。
身支度を済ませ、リビングに顔を出し、カレンダーを見て予定を確認する。今日は百合を車で送ってから豊臣か。
「市ちゃん、黒羽さん昴君、昨日はありがとう」
昨日は柄にもなく百合にがっついてしまったのを反省、いや未遂だが
個人的には抱きたいが、百合が今まで男に抱かれた事が無いと聞いたので抑えないと後で嫌われるのは必須
こんなに自分は欲深かったのだなと認識せざるを得ない状況で。不安でもあるが満たされている気持ちが勝ってくすぐったいが…
市が全員分の弁当を各々に配っていたので百合の分も一緒に受け取り。百合と一緒に家を出た。