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アネモネの夢

第2章 アネモネの夢51~99


「私は、雹牙さんで良いんじゃないです。雹牙さんが、いいの。どんな過去があっても、この先ずっと一番になれなくても、今の雹牙さんが好き」
「百合……」

さっき、お城の中で聞かれたけど答えなかった問いに、漸く返事を返す。お付き合いが始まった時の雹牙さんの不安が、今日のことだったのだと理解できる。
黒羽さんの彼女さんはゆっくり理解していくって言ってたみたいだけど、私はどうなんだろう。本当に理解する必要があるのかな?

「あのね、私はきっと雹牙さんの葛藤とか、ちゃんと理解できないと思う。でも、受け入れることはできるから、雹牙さんは今まで通り市ちゃんが危ない時は市ちゃんを優先してくれたら良いし、構いたかったら構ってもいいと思う。ただ、忘れないでいてほしいの。話してくれた過去と、現代(いま)は違って、市ちゃん以外に私も貴方を待ってる」
「……わかった」

閉じていた目が開いて、私をじっと見た後泣きそうな顔で腕を伸ばされて抱きこまれた。
安心する温もりに目を閉じて胸元にすり寄ると、ひょいっと抱き上げられてベッドに運ばれる。えぇ?! って驚いている間にそっとベッドの上に下ろされて覆いかぶさられる。

「ちょ、まっ、雹牙さん?!」
「最後まではしないが、触らせてくれ……」
「うっ……その頼み方はずるい……」

いつもあんまり動かない表情なのに、そんな切ない顔されたら断れない。顔が真っ赤になるのを自覚しながらも、緊張した身体から力を抜くと優しいキスが落ちてくる。
一週間前の宣言をされた日、不安に落ちた私を甘やかす時以上に甘やかす雹牙さんに溺れる様に浸って、夕方になってから家に戻ったけど、しばらく思考はまともに動きませんでした、ハイ。
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