第2章 アネモネの夢51~99
お市様の役に立つ、傍に居る事が幸せだった。それだけだった。百合と出会うまでは。
大切にしたいんだ、だが、どうしたらいい?どう言えば理解し合えるか。それとも俺は百合を愛する資格が無いのではと、言葉に詰まって項垂れる。
お市様は苦笑いで、自分の事は放っていいのに、と言うが。そうもいかない。
魂に刻まれた忍の心がそれを許さないんだと。説明していた筈なのに苦しくなって、言葉がでてこない。
「黒羽さんの彼女さんは?お話されたんですか?」
「ええ、しました。私の本性も知ってる方なんで。まあ、時間を掛けて理解すると」
「強い方なんですね」
雹牙は器用そうに見えてとても不器用でしょう。ころころと笑う黒羽にうんうんと百合も同意し始めて。
「ああ、でもね、百合ちゃん。昔と違ってかなり柔軟な考えするようになってるから。雹牙は百合ちゃんが大好きで仕方が無いってのは分かって欲しいな」
市が嫁に行ったらどうする積もりなんだろうね、その言葉に3人の忍は市を注目して「そうだった」と零す。
おいおい、市が苦笑いで項垂れると。市にも恋人できたのにといじけはじめた。
「百合」
「うん?」
愛おしさが込み上げて。百合を愛したいと思っているのに。この俺で本当に良いのか?と改めて不安を口にした。
「黒羽さんの彼女さんって寛大すぎません?」
「昴も早く見つかるといいですね」
「ちくしょおおおお!」
氷の婆娑羅で威嚇したら全力で土下座された。人が必死こいてるのにこいつ等話聞かないで雑談とかほんと、ブレないな。