第2章 アネモネの夢51~99
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晴久君にアドバイス貰って信長公に借りた歴史の本を読んでたら、いつの間にか雹牙さんが部屋に居た。
「百合? 何して……」
「んと、ちょっとだけ不安があったから、丁度良く会った晴久君に聞いちゃった」
「聞いたのか?」
「うん。でも、よくわかんなかったです。それで、歴史のお勉強しとけってアドバイス貰ったからして見てるの」
私が机に向かってたから、背後から抱き締めて覗き込んでくる雹牙さんに見えるように歴史の本を見せる。
開いているページは戦国時代。市ちゃんたちと同じ名前の人がたくさん出てきてて、不思議な感じがするけど苗字が同じだから過去の偉人に因んで名前が付けられるなんてよく聞く話だと思う。
雹牙さんは何も言わずに抱き締めてくる腕の力を少し強めて、頭のてっぺんに頬をすり寄せてるみたい。
「雹牙さんが話してくれるって言ったなら、大丈夫だとは思ってるんですけどね? やっぱり何かやっちゃったかなって不安は出ちゃって」
ぽんぽんと目の前にある腕を叩いて僅かに身動ぎすると、腕の力が弱まったのでくるりと椅子を回転させて雹牙さんに向き直る。
腕を伸ばして雹牙さんの背中に回すと私からも抱きついて、屈んだ雹牙さんの胸元に頬をすり寄せる。
この腕の中に収まるとホッとして力が抜けるのが嬉しい。
悪い話ではないと思う。でも、雹牙さん自身もちょっと雰囲気が硬い気がして、つい私も釣られちゃうんだよね。
すりすりと甘えていれば、不意に身体が持ち上がってベッドに運ばれる。
雹牙さんがそこに座って私を膝に乗せると、囲い込むみたいな抱き締め方をされてちょっと恥ずかしい。
「すまない」
「んー……よくわかんないけど、歴史のお勉強してたのは単純に気分です」
「そうか」
「うん、なんか、手持ち無沙汰? 悪い話ではないんですよね?」
「ああ」
「なら大丈夫」