第2章 アネモネの夢51~99
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晴れてお付き合いが始まったみたいです。あの不安だった甘やかしも理由が判ったのでスッキリして、存分に甘えてます。
なんていうか、基本居たせりつくせりというか、友達と遊びに行きたいって言うと送ってくれるけどさっと帰ってって放っておいてくれたりとか放置もしてくれるので、甘えただけど気まぐれなとこもある私はとっても居心地がいいです。
それはさておき、市ちゃんには泣きついたりご迷惑をお掛けしたのでとっておきのスイーツショップで女子会です!
「その節は、大変ご迷惑をお掛けしました……!」
「ふふ、迷惑なんて掛けられてないのに。市、百合ちゃんがこのままお義姉ちゃんになってくれると嬉しいな」
「ぶほっ! なななな、何をっ!?」
お店に入って案内されたテーブルに着き、注文をした所で改めて頭を下げた私に思い切り市ちゃんが爆弾を放り投げました。
見事に被弾で飲もうとしていた水を飲む前に吹出して、慌てて手拭きで濡れた場所を拭きつつじっとり見ればにっこりと可愛らしくも美しい笑顔を返されました。あう……。
だってね、市ちゃんが言う所のお姉ちゃんって要するに、いわゆる、アレでしょ? いやぁ……無理無理無理、とてもじゃないけど漸くお付き合いが始まったらしいくらいの浅い認識でそれはちょっと……。
でもさ、出来るならそういうの嬉しいけどさ、私も私で恋愛経験乏しいし、お付き合いとか正直まともなのは今回が初めてとか色々と、もう本当に色々と……。
思わず頭を抱えてテーブルに伏せると、背後から誰かが市ちゃんを呼んだ。
「市」
「市姉ちゃん!」
「あら、かすがといつきちゃん。二人で来たの?」
「ああ」
近寄ってくる足音がしたので私もいつまでも伏せていたら逆に恥ずかしいと頭を上げると、丁度市ちゃんの前に立った綺麗でナイスバディな女性と可愛らしい女の子が見えた。
ついっとナイスバディな女性を胸元辺りから顔まで視線を昇らせると、その横顔に覚えがあって軽く眉が寄る。
確か、今市ちゃんは”かすが”って呼んでいた。
「もしかして、上杉謙信社長の秘書をされてるかすがさん?」
「……なんだ、お前は」
「あ、私、松本の秘書をしております」
「ああ、あそこの。面識はないな?」
「そうですね。私が遠方から拝見したことがあるだけです」