第2章 アネモネの夢51~99
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百合は会社の同僚に誘われて飲み会に行ったと、LINEの画面をチラつかせお市様にそう伝えれば少し顔を顰めて「大丈夫なの?」と。
あいつは変に厄介な事に巻き込まれやすいから目が離せんなと火のついて無い煙草を咥える
「禁煙したの?」
「ん?ああ、もう火は着けてない」
確か百合のストーカー騒ぎで家に押しかけた時はもう止めていた。初めて飯に誘った時に、車に残ってたヤニの臭いに僅かに顔を顰めていて
交流する回数が増えて行くにつれ自然と本数が減ってったな。その頃にお市様にも止めて欲しいと言われてた事もあったが。
「一時期酷くイラついたな、あれが煙草の恐ろしさだな」
「普段と変わらない素振りだったのに」
「その代わりお市様と百合を攫った馬鹿に発散したが」
「あれかー」
あの人達どうなったの?と問われて、そう言えば百合の元彼の方がヤミ金に手を出していたせいもあってか消息不明。
女の方は左遷された先に居る筈だが随分と風貌が変化していると部下の偵察の報告で上がっていた
お市様を攫ったアホ探偵は黒羽と俺の逆鱗に触れ、法的処置を取って馬鹿息子をギトギトに泣かせてたら親の会社も潰れたと聞いた。直接裏に手を下していたのは信長公だったので何をされたか考えたくも無い。
さらっと報告すればお市様の顔が引き攣った。もう少しオブラートに包んで話した方が良かったか。
…百合は俺達の異質に気付いているが、特に気にしても無さげなんだが。度量が広いのか鈍感なのかいまいち掴めないでいる。
時が来たら言うべきなんだろうが。…ん?時が来たら??
「なしたの?」
「いや、考え事してたんだが内容に首を傾げざるを得ない」
ふと時計を確認し、そろそろ飲み会も終わる頃かと読んでいるとLINEにメッセージが入ったので確認すれば百合からもう直ぐ終わるという連絡だが文脈がいつもと少し違う。あいつ酔っぱらってるな?
お市様は晴久と帰るから気にせず迎えに行ってと言うが、何だろうな。晴久の名前を聞くと殴りたくなる。百合によく「子離れ」と言われるが俺達忍はお市様に依存している傾向があるので認めたく無いというか。