第1章 アネモネの夢00~50
オートロックの鍵を開けてからエレベーターに乗り込み、自宅へと招かれた。美味しいお茶を買って来てくれたのだと知ってお礼を言うと百合ちゃんになんか無言で撫でられたけど。
雹牙に、自分がお茶を用意するから2人は休んでろと言われてリビングで待つことに。いや、百合ちゃんごめん、雹牙こういうの慣れてるというか。執事力が高いのは昔からなんですとしか言えないです。
私服来てるのに執事服着てるような幻覚が見えるんです、私がやるって言うと「俺から趣味を奪う気か」とか怒るとこ違うよね。これは趣味じゃないと思うのこの付き人魂逞しいお兄さん。
私だって用意したいんですよ?食べる前の楽しみ奪うあのお兄さん何ですかね?執事ですかね?
百合ちゃんに雹牙の実態を暴露していれば背後からがしっと頭を掴まれて。じわりじわりとアイアンクローいやああ!話しても差し支えないとこ話してるじゃないですかと抗議をすれば、話す内容が俺の男としての何かを潰すと返された。え?世話焼きお父さんの事ですか?知りませんなあ
「もう、雹牙のお父さん」
「褒めてないからな?ケーキと茶いらんのかお前」
「要る、要ります、欲しいです」
「宜しい」
ぽかんと、私達のやり取りを見てる百合ちゃんはお口がぱっかり。ああ、百合ちゃんと一緒に居た雹牙はきっとクールで格好良いとこしか見せてなかったと思います。たまに崩壊するんですようちの兄。基本かっこいいです、これは私も認めます。
私達の前に切ったケーキとクッキーを小皿に分けたものと、百合ちゃんが買って来てくれた紅茶を置く。自分の分も置いてから椅子に掛ける姿はどこぞの私服のホストだとツッコミたい。