第1章 アネモネの夢00~50
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藍羽百合の住むマンションの前を黒塗りの高級車が停まる。その車から降りて中で待ってると運転手に告げると車は駐車場へ向かい市は荷物を持ち直して建物に入って行った。
少し作り過ぎたかな?バスケットの中には昨日作ったガトーショコラとクッキーが占めており、甘い匂いを漂わせながらLINEを確認すると、本人はまだ帰宅してない様子
「あれ、早く来すぎたかな?」
夕食は済ませてから来るとは送ったけど、そういや何時に行くかは具体的に言ってなかった。こりゃ失敗。
試しに1階のフロアの端末から部屋の番号を押してチャイムを鳴らす、うん、まだ帰って来てないね。反応が無い。
LINEでまず謝罪してもう着いちゃったと送ろうとスマホを取り出した時に、近付く気配に顔を上げると買い物袋をぶら下げ驚いて此方をみる百合ちゃんと目が合った
いやあ、早く来過ぎて本当にごめんなさい。
「市さん?ごめんなさい!遅れちゃって」
「ううん、此方こそごめんね。今丁度着いたんだけど早過ぎちゃったね」
「今開けますね、1人ですか?」
「駐車場に車を置きに行ったの、あ、来た」
ポンと百合ちゃんの頭に、背後から手を乗せてわしわし。雹牙が入ってくると早すぎたか?と。百合ちゃんに首を傾げて問うとぶんぶんと首を横に振って。あーうん、何か兄がやたら可愛い仕草を無意識に振りまいていて百合ちゃん真っ赤ですよ気付いてください。
彼女がぶら下げてる買い物袋を持つからと手を出せば、戸惑う百合ちゃんはあわあわしながら雹牙に買い物袋を渡す。雹牙が優しいのは前世から私と一緒に居るからでしょうか、対応が私向きですよお兄さん。
黒羽も雹牙も傍から見たら紳士っつうか、私に対してやってる事を素でやるから変な女性に勘違いされるんだけど。まあ、百合ちゃん相手ならいいかー。ブラコンだって?ブラコンですよ?
雹牙も黒羽ももう29なんだから私の事は気にしないで彼女とか嫁とか見つければ良いのにほんと根っから忍思考なんだから。
「市さん、鍵開けますからどうぞ入って下さい」
「はーい、お邪魔します」