• テキストサイズ

アネモネの夢

第2章 アネモネの夢51~99


誰の指かなんて考える間もなく、痛いと睨めば手を離した雹牙さんが私はどうするんだと言ってきた。気付いたら市ちゃんは晴久君に連れられてプールに向かった様で、もう居なかった。あれ? おかしいな、市ちゃん見てたはずなのに。
二人になると途端に恥ずかしくなってしまうのは、自分の気持ちを自覚してしまったからで良く考えたら雹牙さんの上着も羽織ってるしうわぁー! って叫びたくなる。
唯一の救いはイルミネーションがメインのこのプールは、照明が演出用の物だけで赤い顔が見られないことだと思う。

「私もプール、入りたいです」

市ちゃんたちと行っちゃわない辺り、チケットを見せた日に言った通り私に付き合ってくれるつもりなんだろう。チラリと見れば静かな視線が返ってきて、恐る恐る希望を口にすると判ったと頷いた雹牙さんに促されて上着を脱いで手を引かれてプールに移動する。
市ちゃんたちの姿はもう見えないし、俯き加減で歩いていたら不意に雹牙さんの歩みが止まって私が一歩前に出てしまったので手が後ろに引っ張られた。
驚いて足を止めて振り返ればどことなく不満そうに見える雹牙さんの顔があって、じっとりとした視線で私を見てくる。

「雹牙さん?」
「俺じゃ、不満だったか?」
「え?」
「嫌なら今からでも誰か呼んで……」
「えぇ?! ちょ、わけわかんないですけど落ち着きましょう!」
「……お前が落ち着け」

酷い、と唇を尖らせて睨んだら、安心したような表情をちらりと見せた雹牙さんに再び首を傾げる。もう一度反芻して、なんとなくいいたいことを察すると申し訳なくなってしょんぼりと肩が落ちた。

「嫌とか、不満じゃなくて、その……は、恥ずかしくて!」
「……お前、混浴の時は平気だったろうが」
「それは! 市ちゃんとか、他にも人が居たから開き直ってたというか……。い、今は、雹牙さんと二人、だから……」

あぁ、恥ずかしい……。頑張って伝えようとしてもどうしても声が小さくなっていくけど、どうにかいいたいことは伝わったみたいでわしわしと頭を撫でられたらそれ以降は何も言われなかった。
代わりなのか良くわからないけど、プールはいつの間にかレンタル浮き輪用意されてるし、色々居たせりつくせりでした。
/ 214ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp