第2章 アネモネの夢51~99
「ね、百合ちゃんも一緒に行こう? 雹牙も誘って」
「え……いや、ええっと……、め、迷惑……」
「雹牙ー!」
「なんだ?」
「プール行こう!」
「はぁ?」
大分先を歩いていた雹牙さんへ、市ちゃんは止める間もなく駆け寄って飛び付くと満面の笑みで誘う。
ああ、羨ましい……なんて思ったのは一瞬で、振り返った市ちゃんが私の顔を見て驚いたのを見て慌ててブンブンと頭を振っていつもの笑顔を貼り付ける。
少し前から実は気付いてたけど、これはもう摘み取れるところを通り越してしまった。しかも、今ので市ちゃんにも確実に確定されちゃったよね。今までは疑われても誤魔化せたのに……。
じっとこちらを見てくる市ちゃんに苦笑を浮かべながらゆるりと頭を振ると、困ったように笑う市ちゃんににっこりと微笑む。
雹牙さんは私と市ちゃんのやり取りがどういう事なのか分かっていないようだったけど、市ちゃんに渡されたチケットを見て私を見ると手招きされた。
「なんですか?」
立ち止まっているので近づいて行けば、ぽんぽんと頭を撫でられて手に持っていたもう一枚のチケットを取り上げられた。
「え? 雹牙さん?」
「お前も行きたいんだろ? 俺と行けばいい」
「え……でも……」
「俺も偶には行ってみるのも面白そうだしな」
ニヤニヤと笑っている市ちゃんが視界に入ったけど、私は雹牙さんの言っている言葉を飲み込むので一杯一杯で、夜寝る頃になって漸く衝撃が訪れるという経験をしました。