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アネモネの夢

第2章 アネモネの夢51~99


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帰り際、社長に呼びとめられて足を止めたら、某企業の社長さんから私宛だと招待券を預かったとのこと。
貰ってきてしまった物を送り返すのはさすがに失礼だからと、受け取って中を確認すると某テーマパークにあるプールの入場券。
しかも、二十歳以上限定の大人気売り切れ御免したチケットで、売りに出したら確実に高値で売れる奴だった。
一瞬売ろうかと思ったけれど一枚で二人入れるそのチケットが二枚あったので、市ちゃんを思い浮かべてありがたく利用することにした。

「市ちゃーん、ただいまー」
「おかえり、百合ちゃん」
「良い物貰ったのー」
「なあに?」

私の通勤はマイカーないので朝はなんかついでだからと送って貰ってるけど、帰りは自力で帰宅なのです。玄関を開けたら市ちゃんも帰ったところなのか、玄関に居たので後ろから抱き着いてぎゅぅっとしてみる。

「何やってんだ?」
「あれ、晴久君も来てたのか。気付いてなかった。ちょっと癒されてた」
「ああ……」

市ちゃんにスリスリしてたら頭上から声がして、あれ? と思って顔を上げたら晴久君が苦笑してた。美人さんぎゅっぎゅして癒されたいのです、って気持ちを目一杯込めて真顔で返事したらなんか納得された。そうか、晴久君はこうして市ちゃんから癒しを受け取ってるのね。
なんとなく意思疎通が上手くいって、お互いに親指をぐっと立てあったらべチンと頭叩かれました。痛い……。

「雹牙さん、痛いです」
「煩い、邪魔だ。いい加減動け」
「はーい。市ちゃんもごめんね」
「ううん、大丈夫。ところで、さっき言ってた良い物ってなあに?」
「あ、そうそう。社長がどっかの会議で相手企業のしゃっちょーさんに貰ったんだって。これ、二枚あるんだけど一枚で二人行けるから市ちゃん、晴久君と行ってきなよ」

市ちゃんから離れて靴をきちんと脱いで揃えてから廊下に上がると、市ちゃんも待っててくれて忘れかけてた用件を聞き直してくれた。
それで鞄から貰った物を取り出して一枚をハイッと渡すと、その内容を確かめて市ちゃんが目を輝かせたので私も嬉しくて笑ったらもう一枚の行方を聞かれてしまった。
一緒に行く人も居ないし、どうしようかなと思っていたんだけど返答に困ったらにっこり笑った市ちゃんがこっそり耳打ちしてくる。
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