第2章 アネモネの夢51~99
「…百合の部屋で手伝ってきます」
「ふふ、お市も先に行っているわ、あとで休憩用のお八つを持って行くわね」
「ありがとうございます」
何か、居た堪れなくて逃げる様にリビングを出てしまったが。妙に気恥ずかしい感情が顔を僅かに赤らめていた。
「雹牙風邪?」
「は?」
「んにゃ、顔ちょっと赤いよ?はい、鏡」
「ああ、」
心配する市の頭に頭突きするように額を合わせれば熱は無いと言われて離す。
粗方片付いた部屋を見わたし、百合の着換えをタンスに入れながら話す黒羽を見てモヨっと。モヨって何だ、もっと言い方あるだろう俺。
「今日は百合ちゃんの好きなの作るからリクエスト考えててね」
「え、じゃあ市ちゃん」
「百合ちゃん!市も…!」
「市ちゃーん!」
「何の茶番だ、抱き合うな!俺を挟んで!!」
「いやあ、良い筋肉」
「市…?」
お前は!ドサクサに紛れて胸や背中に手を這わすんじゃない。やるなら晴久がいるだろうが。百合は顔赤くしたまま市の手を凝視しているし何なんだ今日は。
「本日からお世話になります」
「是非も無し」
家の主に頭を下げて挨拶をしていた百合も、信長公から市と同じ様に頭を撫でられていたのであった。