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アネモネの夢

第2章 アネモネの夢51~99


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百合の引越し当日、前々から荷物を小まめに持ち出していた為に百合がマンションを出る頃にはもう持ち出す物はタンボール1~2個程だったので
今まで世話になった管理人に頭を下げると車へと乗り込んだ。

「百合ちゃんおかえりなさい」
「市ちゃん!ただいまー」

織田に到着し、車を車庫に入れて居たら、お市様が百合を迎えに車庫で待機していた様で。荷物は持って行くから2人で家に入ってろと促すと礼を言って屋敷に入って行った。
車の後部座席に積んでたダンボール箱を抱えて、続いて屋敷に入り。家の中に荷物を降ろすと、台所の方で黒羽と昴が笑い転げてたので何やってるんだと声を掛ければ
ああ、百合の家に居た時に買った茶碗か。

「何だ、笑い転げて」
「ひょ、雹牙に妙に似てるんですもの」
「これ買ったの百合さん?センス良過ぎる」

自分でもその目つきの悪い白い猫の茶碗は似てると思うが、陰で笑われてたのは何か腹立つな。茶碗を没収し、さっさと洗って食器棚に仕舞う。ったく、片付けねえんなら触るな!

「おら黒羽、昴。百合の部屋で荷解き手伝って来い」
「まったく、そんなに目くじら立てずとも行きますよ」
「はーい、いきまーす!」

台所から2人を追い出すと、リビングからこちら3人のやり取りを見ていた濃姫様がクスクスと笑っていて、見苦しい所をお見せしましたと頭を下げれば逆に頭を撫でられた。
いや、もう29なんで頭を撫でられる様な年齢ではないのだが。

「雹牙君、百合ちゃんが大切なのね」
「…正直、実感は無いのですが」
「昔の貴方なら珍しい光景でしょうね。でも、今の世になって丸くなったわ」
「はあ、皆にそう言われます」

俺だけ言われてる気もするが黒羽も大分丸くなってると思う。各々の家庭で生まれている忍頭共も。
伊達の時雨が先に所帯を持ったせいか、俺達もそうなる様な目で見られてムズ痒いが。俺だけの目では無いのでまだマシだ。
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