第2章 アネモネの夢51~99
「百合ちゃん、うちにある貴女の部屋は掃除してるけどいつまでも用意したままって訳じゃ無いと思って」
「え、っと」
「家に引っ越す気は無いかしら?」
「そちらに?織田の家に?」
「ふふっ、いつでも返事は待ってるわ。お市も雹牙君も喜ぶでしょうし」
市ちゃんと、雹牙…さん。
凄く、凄く会いたいと、思わずポロポロ涙が溢れて。寂しい、一人にしないでと言う勝手な我儘に支配されて、コクコクと泣きじゃくりながら頷くと帰蝶さんに優しく抱きしめられて。
「黒羽君も昴君も貴女を気に入ってるし、お市も寂しそうにしてるのよ?」
「…ひょ、が、さんは?」
「雹牙君、あれでも貴女に会ってから随分と角が取れて丸くなったわ、前までお市の言う事しか聞かなかったのよ?」
クスクスと笑いながら語る帰蝶さんの腕の中でみっともなく泣いて。みっともなく寂しいと縋って。
夢の様な提案に、本当にこれが夢何じゃなかろうかと不安もあったけれども。
翌日になって昼休みに雹牙さんが返事を貰いに来るまでずっと妙に不安な時間を費やしてしまった。
「藍羽君同棲?」
「松本殿、違うから」
「うん、でも」
百合は良かったねと言われて社長に可愛がられた