第2章 アネモネの夢51~99
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ここ数日、百合は元気がどことなく無く。珍しく軽くミスをして松本に頭を下げていた。松本は原因をだいたい把握してるので強く注意はせず、百合の頭を撫でてからこれから気を付けてと優しく笑った。
仕事にまで影響するとは、百合は軽く頭を抱えて、先日ストーカーの件が解決して、雹牙は織田の家に帰ってしまった事を思い出し、ここ数日寂しさでロクに食事も摂れずに凹んでいた。
「何かないと雹牙さん達と会えないのも辛いなぁ」
市は最近、己の洋服ブランドを立ち上げたのだが予想外に人気が出て、こちらに遊びに来る事も出来ないほど忙しい
雹牙は元々織田の重鎮。こちらの仕事が終わってから忙しいらしく滅多に来る事も無くなり。
…まるで市ちゃんに拾われる前に戻ったんじゃないかと錯覚するくらい。自宅に戻っても心に穴が開いたかのように寂しさが募る。
夕食も、作っても何だか味気ない、雹牙さんのご飯も、市ちゃんのご飯も、暖かくて美味しかったなと思い出してはまた沈む。
「寂しいよう」
雹牙が百合の家から出てから1週間。今日も何とか仕事を終わらせ、トボトボと帰宅するが電気を付けても誰も居ない空気に軽く溜め息を吐く。
ピンポーン
1階のフロアからのインターホンに本気で驚いて時計を見る。こんな時間に誰だろうとモニターを覗くと、目を見開いて思わず「ええええ!?」と驚きの声を上げてしまった。
いや、まず、開けて招き入れなければ!!
「5分お待ちください!」と客に待ってもらって急いで部屋を片付けて招く
「百合ちゃん元気だったかしら?」
「帰蝶さん!信長公も!どうなさったんですか?」
「フン、随分と腑抜けた面よ」
「う、申し訳ありません」
仕事帰りに寄ってくれたと言うお2人に頭を下げれば、頭の上に信長公の手が乗ってあげられない。
どうしたんだろうと黙ってれば無言で撫でられてしまい。満足したのか鼻で笑われた。
「あの、帰蝶さん、」
「もし良かったらなんだけど」
帰蝶さんからの提案に耳を傾ければ、思わぬ誘いに思わず帰蝶さんに抱き付いてしまった。頭撫でられてるけど!