第1章 アネモネの夢00~50
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なんだか雹牙さんの様子がおかしいけど、初めての慰安旅行の指令にウキウキと準備して運転を晴久君と雹牙さんがしてくれて旅館に着きました!
なんか着いた途端に雹牙さんが大暴れしてたり、雹牙さんのお父さんだという方が現れたりしたけど生まれた直後に何らかの事情で養子とか普通にありだろうと頷いてそのまま流したら何故か晴久君に感心された。
市ちゃんがさらっとしれっと流した理由が私だからというので、ちょっと涙目になったけど戻ってきた雹牙さんに頭撫でられて落ちかけた機嫌はさくっと戻りました。
現金で何が悪い! 美形は正義!! それはさておき、荷物を置いたので今からお菓子街道と銘を打たれている商店街? 街並み? に向かいます!
雹牙さんと晴久君がそれぞれ私と市ちゃんを捕まえて最寄りの駐車場から手を引いて歩いてくれます。何故かと言うと、つい先ほど私と市ちゃんが二人して暴走して雹牙さんも晴久君もそっちのけでお店に走り出したから、デス。
だって甘味! おいしそうなお菓子!! 目の前にいっぱいあるんだよ!?
市ちゃんと二人で主張したけどしっぶい顔で首を横に振られました。しゅんとしたら雹牙さんの手がぽんぽんと頭を撫でて、そのままスルリと手が手に絡まって嬉しいけど恥ずかしい。
素でこういうこと出来るのは何でかと思ったら、市ちゃんが小さい頃はしょっちゅうだったらしいです。妹扱い! なんか最近コレ、複雑なんだよなぁ……。
「どうした?」
「んーん、どうもしないデス」
「そうか?」
「はい」
仕事ではなくプライベートなので、上手く感情を隠すことも出来ていないらしい。雹牙さんが心配そうに顔を覗き込んできたから、フルリと首を振ったらまた頭を撫でられた。
複雑だけど気持ち良くて、目を細めてすりっと擦り寄ったら更に撫でてから手は離れ、振り向いた市ちゃんの手招きで私と雹牙さんもお店に入っていく。
私は気付かなかったけれど、丁度その瞬間を見ている例の男性社員さんが居たらしくその表情がとてもショックを受けたような顔だったと言うのは後で聞いた話。
私は促されるままに市ちゃんと二人で甘味に舌鼓を打ち、食べきれないだろうと絞った分は雹牙さんと晴久君が苦手ではないとはいえ、得意でもないだろうに引き受けて全部味見出来て大満足で旅館に戻った。