第1章 アネモネの夢00~50
隠れた温泉宿、とだけあって車も渋滞にならずすんなり旅館に到着。荷物を背負い旅館の玄関に入れば女将が頭を下げて出迎えてくれた
「ようお出で下さいました。織田様ですね」
「一泊、世話になります」
「大した御持て成しもできませんがゆっくりしてってください」
女将に挨拶をし、部屋に案内して貰おうと靴を履き替えた瞬間に。雹牙は物凄い勢いで前方に吹っ飛ばされて。転ぶ前に足を踏ん張り。衝撃の元となった人物を睨み付けた。
「よう、元気にしてたか!お市様は綺麗になったなあ、尼子の坊主も息災で何より」
驚いた表情で、百合は雹牙を心配しながらも突然現れた男を見て、どことなく雹牙と面影が似ている男を見た
長い白髪を後ろで1本に縛っていて、顔が美形だ、だけど年は結構行ってるかな。
瞳は黒曜石の様に黒いが、雹牙を見る目は穏やかで可愛がっての行動だとは把握したけど。
「丹波お前何しに来た」
「そんな邪険にすんな、でかくなったなあ馬鹿息子」
「え」
目を見開いて雹牙を見る百合の反応に、雹牙は内心しまったと思ったが。
「よ…嫁か?」
「くたばれ!!」
丹波のこっぱずかしい発言に思わず手と言うか脚と言うか。
旅館から追い出す勢いで動く雹牙を見て、事情を知ってるのか女将がころころ笑ってたけど、百合の頭には「雹牙さんのお父さん」というワードが強く残っていた。
「百地さん息子さんと居ると生き生きとしてますねえ」
「雹牙さんのお父さん…え、百地?」
「お嬢さんは事情は知らないようですね、まあ、息子さんは織田家に養子に入ったと思って下さいな」
「あ、はい」
「藍羽さん適応能力たけえな」
「百合ちゃんだし」
「市ちゃーん」
一気に色んな事が起きて心臓バクバクです。適応しなきゃいけないと本能で理解したつもりです。だって織田の方達だもん。