第1章 アネモネの夢00~50
「僕は、彼女にそういう人間だと判じられた、ということですか?」
「少なくとも、彼女の本質を大切にする人間には見えなかった、ということだろうな」
「彼女の本質、ですか?」
「そう、そこで疑問に思う時点で君は彼女の相手にはなりえないよ。彼女は押しに弱いわけではない、仕事は気が強くきびきびと進めなければ困るからそうしているけれどね。本来はとても大らかで柔軟な性格で、とても単純なんだよ。小さなことで一喜一憂して笑顔を見せる程度にはね」
「まさか……」
「なら、もう一度雹牙君と居るところをきちんと見てごらん。その上で、告白して振られて来ると良い」
「振られるのは確定なんですか」
「あそこまで嫌悪されれば、フラれない方が奇跡だよ」
松本の言葉に信じられないと言いたげな表情をしたが、思い当る節はあったのかがっくりと肩を落とした杉田は苦い笑みを浮かべて促されるまま社長室を出て行った。