第1章 アネモネの夢00~50
「発信機ですかね」
取り付けられていたのは五センチ角ほどの黒い物体、車体から外すと中の無線を引っ張り出して無効にさせると同時に、店から出て来た雹牙様の視線に頷いて木の上に飛んだ。
今の世って便利ですよね、LINEを開いて忍グループに画像を送り、雹牙様の車に取り付けられてましたと報告すれば真っ先に反応したのは伊達の時雨殿。
時雨『〇×社の本格的な発信機だな』
「情報ありがとうございます、と」
猿飛『何々、雹牙の旦那ってストーカーされてんの?』
「佐助殿、雹牙様にストーカーしたら命がいくつあっても足りませんよ」
風魔『…女か』
雹牙『お前等、今度会ったら殺されたいか?』
猿飛『キャー、旦那こっわーい』
話がずれてきてる、駄目ですね。
スマホを仕舞って、さてあの男を追おうと枝を蹴って再び建物の上を駆ける事にした。
「行ったか」
「もしかして誰か傍に居ました?」
「まあ、そんな所だ」
ぽんぽんと、百合の頭を撫でて誤魔化さずに、だが詳しくは言えないと含ませればそれ以上問われず。何とかなる。そう僅かに微笑むとこくりと頷く。
気配を探りながら車に乗り込み、安全を確認すると帰って飯にしようと声を掛けて車を走らせた
百合が好きだと言っていたものを作れば驚いた顔で「何で?」って顔してるが、お前うちに泊まった時に市とそんな会話してただろうと突っ込めばよく覚えてますねと
「うう、美味しいですけど私の中の女の部分が負けたと悲鳴を上げています」
「今は男も料理するだろう…」
「そうなんですけど!!おいしいいい」
「黙って食え」
「ふぁい!」
いまいち慣れぬ平和な日常に、少しくすぐったい気がするが。こんな日常も悪く無いなと、無意識に笑っていた様だった。
猿飛『雹牙の旦那って婿になるの?嫁になるの?』
「ようしこの猿、そんなに折って欲しいか色々」
この茶化す忍は今度会ったら全力でプロレス技食らわせてやる。