第1章 Sugar1
貴方は優しさを見せてくれるくせに、甘いところはいつも見せてくれない。
箸を置いて慌てて、彼の元へ走った。
「都合がいい女だから?なんでも流司さんの言うこと聞くから?面倒くさくないから?」
彼の腕を掴んで、まくし立てるように問うた。
「・・・」
無言で怒ってるよ・・・。
「りゅ・・・」
「相当怒らせたいみたいだね。」
違う。怒らせたいわけじゃない。
貴方の気持ちが知りたいの。貴方の気持ちがわからないの。
「今からキスするから、私のこと好きじゃないなら、止めて。」
流司さんは眉間に皺を寄せた。
少し背伸びをして、ゆっくりと顔を近付けていった。
「うぐっ」
片手でほっぺをぶにゅっとされた。
「なに、血迷ってんの?好きかどうかは関係なく、俺はお前とキスする気なんてない。」
出てくる涙を必死で溢れないようにして、彼の手をほっぺから退ける。
「好きじゃないから、キスしたくないんでしょ!?」
「・・・」
「もう、いや・・・。こんな自分、やだ・・・。私ばっかりが流司さんのこと好きで・・・私はそれを流司さんに押し付けて・・・。こんな彼女で、ごめんなさい・・・」
「はぁ・・・」
彼は盛大にため息をつき、おでこに優しく口付けた。
「お前、今日帰って来たら、覚えとけよ。」
そう言って、出掛ける準備をする。
おでこにまだ彼の唇の感覚が残ってる。
キスの場所はおでこだけど、すごく嬉しい。
初めて、甘い貴方を見れた。
これからは、もっともっと甘い貴方を見せて・・・。
準備ができたのか、流司さんは出掛ける格好になって、玄関に向かった。
急いで追いかけた。
「流司さん、大好き、行ってらっしゃい!」
「うん、俺も。行って来ます。」
「え?・・・流司さん、いまっ・・・」
行っちゃった・・・。
最初の方すんごい声ちっちゃかったけど、俺もって言ったよね・・・?
なに?流司さん今日、素直すぎるよ・・・。どうしたの・・・?
私も、機嫌良く仕事に向かった。