第3章 Sugar3
「さっ、打ち上げ行くぞー!心羽ちゃん、流司、連れてきて!」
「麻璃央、お前バカか!今見てたやろ・・・」
麻璃央さんの発言に、鳥越さんが小声で非難する。
それでも、麻璃央さんはもう一度私に、言う。
「心羽ちゃん、連れてきて流司。」
「どこにいるか、わかり、ませんっ!」
嗚咽で上手く言葉を言えない。
「探しなよ、見つかるまで。いなくなって欲しくないなら。」
麻璃央さんのその言葉で、私は涙を流しながら走り出した。
そうだ、私はずっと流司さんと一緒にいたいんだ。
隣に。誰よりも一番近くに。
私は、彼の、佐藤流司の彼女でいたい。
彼が、私を好きじゃなくなるまで。
いろんなところを探しまくった。
楽屋も、たくさんの廊下も、広場も、暗い舞台袖も。
まだ、衣装のままのはずだから、外には出ていないと思う。
まだ、行ってないところ・・・トイレ。
男子トイレ。
舞台から一番近い、トイレにそっと入った。
誰もいませんように・・・流司さん以外。
「うっ・・・ずっ。」
一番奥の個室が閉まっていて、嗚咽と鼻水のすする音が聞こえる。
きっと、流司さんだ。
そんな感じがした。
開けてと言っても、開けてくれないのはわかってる。
隣の個室に入り、便座の上に立った。
ジャンプをして、彼がいる方の仕切りの上に掴まり、その勢いと腕の力で下腹部までは、登ることが出来た。
「っ?!おまっ!!な、何してっ?!は、はぁ?!」
やっぱりそこには、流司さんがいて・・・めちゃくちゃ驚いてる。
「流司さん、見っけ!」
かくれんぼをする子供みたいに、言いたかったけど、声が震えて、全然ダメだった。
「ちょっ、危ねぇって!」
仕切りの上に足をかけて、彼がいる個室に降りようとすると、流司さんが便座の上に立ち、手を差し出してくれる。
彼の頬には、たくさんの涙の痕があった。
それを見たら、もっと泣きそうになって、必死に堪えた。
差し出してくれた彼の手を取って、飛び付いた。
流司さんは、少しだけ体勢を崩しながらも、しっかり受け止めてくれた。
「危ねぇだろ、ばーか。」