第3章 Sugar3
少し離れて、
「心羽、バイバイ。」
彼女の顔を見ずにそう告げて、二人の間の距離を広げた。
「・・・へ?」
彼女の間抜けな声を背中で聞きながら、お互いの距離を遠ざけた。
身体も心も・・・。
結構上手くいってたのにって、あいつは思ってんだろうなぁ。
彼女がどんなにバカでも、俺の言葉の重さも声の冷たさも、全部伝わってた。
バイバイ、その一言で。
「どうしてっ!?・・・やくそく・・・約束したじゃん!!私はずっと流司さんの傍にいるって!!・・・したじゃんっ・・・!!」
悲鳴の様な彼女の言葉を、全部受け止めて、
「これ以上、一緒にいたらお互いに辛いじゃん。お前だって、わかってんだろ。」
震えた声で、精一杯応えた。背中を向けて。
今、心羽の顔なんて見れない。
俺のこんな、クソかっこわりぃ顔なんて見せられない。
足早に、トイレの個室へ逃げた。
「くっ・・・うっ・・・」
初めてだ、こんな人を好きになったのは・・・。
好き過ぎて、大切過ぎて・・・抱けない。
あいつはいいって言ってくれるけど、怖がってるのわかってるから、それ以上には、進めない。
あいつが見たい俺も出来ない。
プライドが邪魔して、素直に甘えられない。素直な言葉が出て来ない。
このまま一緒にいても、そんなの辛いだけだ。
なら、俺から別れを告げよう。
残酷な言葉を・・・言いたくない言葉を言うのは俺だけでいい。
「心羽・・・愛してるよ・・・これからもずっと・・・。」
心臓を握り締められてるみたいだ。
息も出来ない程、苦しい。
この苦しみも、痛みも、永遠に続くんだろうなぁ。
嫌だなぁ。
心羽、好きだよ、大好き。
俺は心の中で、彼女に愛を叫び続けた。
彼女に届かないことを願いながらも、俺の心の大半を占めるこの想いを、消し去ることなんて、例え生まれ変わったとしても、出来なそう。
俺はきっと、永遠に鈴木心羽を愛し続けるだろう。