第14章 Sugar14
「すっごく美味しくて、つい食べ過ぎちゃった。心羽ちゃん、今日はありがとうね?」
パパとママは、帰りの新幹線の時間があるから、もう行かなきゃいけない。
「俺、見送りしてくるから。」
「私もっ・・・。」
「お前はお義父さんとお義母さんいるだろ。」
お母さんたちなんか、自分たちで帰れるでしょ。
そんな遠くないんだから。
「私たち、もう少しいてもいいかな?」
「どうぞ。」
「は?」
その反応やめろって、彼に軽く頭を叩かれた。
流司さんたちが出ていき、30分くらい経った。
「あぁあ、心羽が嫁に行くのかぁ・・・。」
「なんか、ロマンチックね・・・流司くん、初めての彼氏でしょ?」
「ねぇ、お母さんたちはどうして結婚したの?」
結婚っていうのは、すごく大きなことで・・・彼と出会うまでそんなの、意識すらしてなかった。
あまりちゃんと実感もしてない。
夢なんじゃないかって。
彼のファンの前で誓ったことも、ただの夢だったんじゃないか。
いつも不安になる。
隣にいるのは、本物の彼なのか・・・それとも幻なのか。
朝、目が覚めた時、彼が隣にいなかったらどうしよう。
1年半前までずっと使っていた、あのベッドの上だったらどうしよう。
でも、そんな不安はいつも彼がどっかにやってくれる。
すぐそこにいてくれるから、私は心の底から幸せだって思える。
「私の初めてが全部、流司さんでよかった。心からそう思えるのが、すごく幸せ。」
「そうよ。全部が彼でよかった、彼の隣にいれるのがなによりの幸せ、そう思える人だったから、私はお父さんを選んだの。」
そっか、そうだよね。
お母さんもお父さんが好きだから、結婚したんだもんね。
小さなことで、幸せを感じられる人。
あたりまえのことで、幸せを感じられる人。
きっとそういう相手と結婚すれば、幸せになれるんだよね。
「私も思うよ。最初は嫌われるのが怖くて、都合が良い女になろうとしてた。でも、初めて彼から好きだっていう言葉聞いてから、我儘言えるようになったの。」
やっと本当の恋人になれたのかなって思った。
「好きな人に我儘言うのって、すごく勇気がいることだったんだね。」
まだ彼に我儘を言い続けたい。