第14章 Sugar14
「あんなありきたりな・・・皆が言う様なこと、俺あんま言いたくないんですけど、どっかの誰かさんがあとからうるさいと思うので、言わせて頂きます。」
どっかの誰かさんって誰だよ。
ってつっこみたいけど、口は挟みたくないから、黙って静かにしてる。
彼が今、すごく勇気を出して言ってくれてるの、わかってるから。
「彼女と出会ってから2年経ち、付き合って1年半。最初の半年は恋人らしいことは何一つしてやれませんでした。」
きっとたくさん考えておいてくれたんだろう。
それでも纏まらず、一生懸命言葉を選んで紡んでいく彼は、いつもの余裕なんてなくて・・・彼の中の私との思い出が色褪せることなく、作られていってるんだなって思わせてくれる。
「初めて俺が彼女に好きだと伝えられたのは、ライバルである麻璃央くんのおかげでした。ライバルというか、完全に俺が勝ってんですけど。」
あの時麻璃央さんが、悪者になってくれたから・・・。
「その時の自分は、本当に自信がありませんでした。彼女に好かれてるという自信が。でも今はちゃんとあります。彼女がこんな俺を、いつでも求めてくれるから。」
流司さんだから、欲しい・・・。
どんな流司さんでも、知りたい。
「こんなに人を好きになるのは・・・ましては愛しいと思う程、醜いくらい独占欲が出てしまうのは、心羽だけなんです。俺にはもう、心羽しかいません。こいつじゃなきゃダメなんです。」
私がなんで、こんなに緊張してるんだろう。
「心羽だけでいい。俺の人生に必要なのは、心羽なんです。だから・・・お願いします。娘さんを俺にください。必ず・・・俺が鈴木心羽という1人の女を幸せにします。」
あぁもう、ダメだ・・・死んじゃう。
死んでもいい。
彼が言い切るのを待っていたかの様にお父さんが口を開いた。
「娘の選択肢は、佐藤流司、君一択だ。反対等しない。心羽が選んだ男だ、不安も心配もない。俺も心羽を幸せに出来るのは、君しかいないと思っているよ。こんな我儘で可愛げもなく、不器用な娘をよろしく頼む。」
ごめん、泣いちゃうね・・・。
こういう時の涙は、結婚式までとっときたかったんだけど。