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甘い貴方を見つけるまで【佐藤流司】裏

第14章 Sugar14


お母さんとの電話が終わり、稽古場に戻ろうとしたら、私を呼ぶ声が聞こえた。


「心羽ちゃん?どうしたの、こんなところで。もう稽古始まってるでしょ?」


何度も聞いた声。

今は1番、聞きたくない。


「麻璃央さんこそ、遅いですね。」


大丈夫、ちゃんと言えたはず。


「あれ、聞いてない?俺、朝一で他の仕事あるから、遅れるって。」


「あ、そうだったんですか。」


そう言われれば、そうだった気がする。


てか、朝早いのに昨日来てくれたの?

申し訳ないな・・・。

でも、謝っちゃダメだ。


あの時間は私たちにとって、大事なものだったから。

必要なものだったから。

それは、彼も流司さんも知ってたから、昨日話したんだ。

そしてもう、あの話は昨日でお終い。

もう、しちゃいけない。


「行きましょう!皆に遅れを取っちゃいますよ?」


「うっさいわ。これくらいで遅れなんか取らないよ。」


ほら、いつも通りに出来る。

それはきっと、彼のおかげ。

麻璃央さんが強いから。


彼がいつも通りにしてくれるから、私も出来る。


「あ!心羽ちゃんどこ言ってたの?麻璃央も結構かかったね。」


「うん、ごめん。やっと来れた。」


抜け出したのバレてた。


「心羽ちゃん、流司か?」


「いや、違っ・・・うくはないですね。」


「違わねぇのかよ!」


大地さんがえくぼを作って、可愛く笑う。


流司さんから連絡来てたし、違うくはないんだよな。


「親に連絡しなきゃいけなくて・・・すみません。」


「あれ、流司って・・・。」


「流司さんからも連絡来てたんで・・・あれ、涼さん、流司さんからなにも聞いてないですか?」


彼のことだから、涼さんに言ってると思った。

まぁ、昨日の今日だしね。


「明日、お互いの親とご飯食べること?」


やっぱ涼さんには言ってたか。


「そういえば朝、俺にもメッセージ来てた。」


麻璃央さんにも言ってたんだね。

あの後なのによく言えたね。


彼らのそういうとこに、本当に救われる。

2人もいつも通りだ、って。


私だけがごちゃごちゃ考えて、バカみたい。

違う、私のためだ。

私が辛くならない様に・・・ほんと優しいね。






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